そごん

昨日帰宅して眠っていると電話がぷるるっとなりました。寝ぼけ状態で電話を取るとなんと私の故郷におわします先輩あぶさんでした!「いやー、ポルンガ!」と言う挨拶に始まり、「いまから行きます!」というまさかの大阪登場でございます。「いま奈良です。」という言葉にビックリした私は電話を終えた後、そのまま再び眠りについてしまいました。そしてもう一度の着信により再び目を覚ました私は、先輩を迎え入れるにふさわしい部屋にするために、ちょっと片付けをして身支度を致しました。その後駅前にて先輩と合流し、伝説の店にて昼食後、いきなり難波方面に繰り出すことになりました。そして難波を練り歩き、その後最近オープンしたデパート「そごう」に寄った時に事件は起こりました。
私とあぶさんが12階のミュージックショップへ向けてひたすらにエスカレーターに乗っていると、私の右腕に突然異常に冷たく、そしてしっとりとした物が触れたのです。「なんだっ!」と思って振り向くと、狭くて人の多いエスカレーターの中、人を掻き分けながら進むひときわ異彩を放つ一人の男が居たのです。その男の手は異常に冷たく、そしてしっとりとしており、背骨が凍りつくような寒気を感じました。そして私はあぶさんに、「い…いまのはなんだっ!」という顔をすると、あぶさんも腕をさすりながら、「なんだ今のは…!!」という顔をしていました。そしてその男は更に人を腕でぐいぐい描き分け、一般客のみんなの顔をゾッとさせながらとっても早いスピードでエスカレーターを登っていきました。
「あれは何だったんだ…」
僕達は呆然としたままエスカレーターを登りながら、ようやく彼の存在を理解しました。
…あれはそごうの妖精じゃないのか?
そうだ!そごうの妖精「そごん」だ!
僕達は何という幸運な瞬間に立ち会えたのでしょう、彼はそごうに極たまに現れるそごうの妖精そごんだったのです。多分この先そごうに何回来ても彼に出会えることは無いでしょう。それはまるでもうトトロには会えないんだよ。というようなレベルで僕達は、とっても貴重な体験をできたのです。その後感動に浸っていた僕達はようやくミュージックショップに着きました。そしてあぶさんの探していたものがそこで偶然見つけることが出来たのです。僕達は大いに喜びました。
「ありがとうそごん。」
そうです、彼に偶然にも出会えたからこそ、僕達は希望を叶えられたのです。多分この先そごんに出会えることはないでしょう。しかし、彼が残してくれた幸運と手の冷たさは、忘れる事無く僕達の心にいつまでも残っていることでしょう。