〜私の首は依然痛いままだった。激烈なる痛みをまだ抱えていた。



…そのまま必死の思いで車を運転し続けた。少しでも早く目的地について運転を終わらせるため、猛スピードで飛ばしていた。途中人気の無い路地に私の車が滑り込んだ時、目の前に真っ黒なトレンチコートと真っ黒なシルクハットを深くかぶったやたらと長身な男が飛び込んできた。とっさの出来事に私はかわしきれず車の真正面に男は激突した。男は2メートルから3メートル程宙を舞った。とても長身なためトレンチコートがカーテンのようにバサバサと翻り、地面に衝突した。「しまった!」私は自分の血の気が引いていくのを感じた。私は放心状態でしばらくの間男を眺め続けた。いや、ほんの数秒だったのかもしれないが、私がハッと事の重大さに気づくまでの時間はその数倍に感じられた。とんでもないことをしてしまった。私はとてつもない絶望感にとらわれながらも車のドアに手を掛けた。その瞬間、全身黒尽くめの男はムクリと立ち上がった。シルクハットの影に隠れて顔は見えない。「ああっ。」私は驚きと安堵の混ざった奇怪な声を漏らした。